



黒髪女子をとにかく愛でたい 3|腐女子向けTLマンガ試し読み
黒髪女子をとにかく愛でたい 3|腐女子向けTLマンガオリジナルストーリー
星野さんが笹井君のお部屋へ行きます。
そこに現れた人物と、ちょっとしたやりとりの末の出来事。
主人公によるゆる溺愛の恋の顛末。
今まで通りですが、すこしだけ今まで通りではない二人のお話です。
黒髪好きが黒髪女子をとにかく、とにかく愛でます。黒髪好きによる、黒髪女子愛です。
これだけは言っておきたかった。
それではどうぞ。
「ありがとね、手伝ってくれて」
「別に、構わないよ」
「でも本当にいいの? こんな日に手伝わせてしまって」
「いいよ、だって今日じゃないとダメなんでしょう?」
「うん……。そうなんだけど、やっぱ申し訳ないって思っちゃうなぁ……」
そんな会話をしながら私と彼女は隣同士で歩いていた。時刻は夜の六時をまわり、辺りは暗くなり始めている。
「なら、この後の私の時間はあなたが予約してちょうだい」
「……え?」
「だってそうでしょう? 今日はクリスマスイブなんだもの。それなら大切な人と過ごすのが一番じゃないかしら?」
「ちょ、ちょっと待って! そんないきなり言われても……っていうか……」
「あら、違うのかしら?」
私は首をかしげながらそう言った。すると彼女は何故か口をパクパクさせながら慌てふためく。いったいどうしたのだろうか? 私はただ一緒にいたいだけなのに……。
「ち、違うわ! わ、私だってあなたと一緒に過ごしたい……わよ……」
「そう、よかったわ」
私はそう言うと彼女の手を握りしめる。彼女は一瞬驚いたが、すぐに手を握り返してくれた。それが嬉しくてつい口元が緩んでしまう。
そんな時だった。前から人が歩いてきたため私たちは端に避ける。その時だった──
「っと、大丈夫か?」
「あ、はい……。すみません、ありがとうございます」
男性とぶつかってしまったのだ。その拍子に彼女が転びそうになってしまう。私は急いで彼女を支えた。
「大丈夫?」
「あ、うん……ごめんね」
「ううん、気にしないで」
すると今度は私が人にぶつかってしまう。どうやら向こうの不注意だったようだが、さすがに失礼だと思ったのだろう彼女は慌てて謝る。
しかし──
「ったく、前見て歩けよババア!」
(そっちもな!)
などと突っ込む者は誰もおらず私たちはただ呆然と立ち尽くす。すると向こうはそのまま立ち去って行った。
「あ、あの……なんかごめん……」
「気にしないでいいのよ……。あの人も悪気はないんだし……」
私たちは苦笑いしながらそう言い合う。そして再び歩き始めたが──
(さっきはババアって言いかけてたな……)
やはり突っ込む者は誰一人いなかったという。
またある時は、映画館でのこと──
「それにしても、まさかあんなところで会うなんて思わなかったわ」
「そ、そうだね……。ホントビックリしたよ……」
「あら、嫌だった?」
「ううん、全然嫌じゃないけど……」
彼女はそう言いながら私と繋いでいる手をチラリと見る。私もそれにつられて彼女を見た後、もう一度視線を前に向けた。すると──
「あ、ごめん……嫌だった?」
そう言って慌てて手の力を抜こうとするので私はそれを引き止めるように強く握ると首を振った。そしてそのまま指と指を絡ませるようにして手を繋ぐと彼女は驚いた表情を見せた。
「嫌じゃ……ない」
そう言って私は彼女の顔を見る。すると彼女は頬を赤く染めながら優しく微笑んでいた。それだけでなんだか私も嬉しくなり、彼女と同じように微笑むとそのまま映画館の中へと入っていった。
((リア充爆発しろ!))
相変わらず突っ込む者は誰もいなかったという。
またある時は、お家デートでのこと──
「ごめんね? せっかくの休みなのに手伝わせちゃって……」
「全然構わないよ。だってこれは、あなたの大切な記念日なのでしょう?」
「うん、そうだよ……。だからどうしてもあなたに手伝ってほしかったの」
「そう……」
私は彼女の横に座りながらそう言うと、優しく頭を撫でた。彼女は気持ちよさそうに目を細めると私にもたれかかってくる。その様子が可愛くてつい顔が緩んでしまった。
すると今度は彼女が私の頭を撫でてくるので少し驚いてしまう。そしてお互い顔を見合わせると笑い合った。なんだかこうして彼女といる時間がとても幸せに思えたからだ