



居酒屋バイト!ノンケ少年セクハラOK係|BLマンガ腐女子向け試し読み
居酒屋バイト!ノンケ少年セクハラOK係|BLマンガ腐女子向けオリジナルストーリー
「男だし…どうせ多少触られるくらいだろう」 しかし…
「皆お客さんにセクハラされて大変そうだなあ…
まあ、僕は影薄いから無縁だけど」
「空気になれるから」という理由で居酒屋バイトをする、ぼっちで内気なノンケ少年、ハル。
しかし突然店のセクハラ防止&売上向上の為、全店員の身代わりに店のセクハラを受ける「セクハラOK係」に任命されてしまう。
「男だし多少触られるくらいだろう」
甘く見ていたが、酔ったおじさんのスケベ心は予想をはるかに上回り何をされても必死に耐えるがノンケ少年の身体は「メスの悦び」を知ってしまった。
ノンケ少年に向けられる無数の性的な視線、そしてセクハラ
何があっても「お客様」を満足させなければいけない!
何故ならそれが「仕事」だから!居酒屋のバイトは楽しい?それとも……地獄?
「この仕事を選んだのは自分だ!」
ノンケ少年の肉体と精神がジワジワと壊されていく!
『この仕事を選んだのは自分だ!』
そう自分に言い聞かせて、ハルは今日も接客に勤しむ。
「いらっしゃいませー」
しかし、今日という日に限ってやたらとセクハラをされる。
最初は脚を撫でられただけ……しかしだんだんとエスカレートしていき、つい先日はトイレに連れ込まれそうになった。
「ハルちゃん、お尻触らせて」
「はあ!?無理です!」
しかし客は引き下がらない。
「そんなこと言わないでさあ……
俺達、もうこんなに仲良くなったじゃん?」
「いや、お客様とは店員と客っていう関係ですし」
「じゃあもっと仲良くなろうよ」
そう言って、強引にハルの尻に触れようとしたその時……
「何してんだお前っ!!」
店の奥から店長が現れて客の手をひねりあげた。
「いってぇえええっ!!な、何すんだよ!」
「セクハラは禁止だ。どうしてもしたいなら『そういう店』に行ってくれよ」
ハルは胸をなでおろす……だがしかし、ホッとしたのもつかの間、店長がとんでもないことを口にした。
「それと……ハルが嫌がることはするな」
「えっ!?」
今まで散々触られてきたのに今更何を言い出すんだ?と疑問に思うハルに店長は続ける。
「ハルは嫌がってないだろ? だからセクハラじゃない」
「いや、嫌がってます」
「ハルが嫌がってるっていうなら……『触られるのが嫌』じゃなくて『俺に触られるのが嫌』ってことなんじゃないのか?」
「……っ!!」
嫌な気持ちに変わりはない……でも、店長に図星を突かれムキになって反論する気が削がれてしまった。そんなハルに追い打ちをかけるかのように更に追い討ちの言葉をかける。
「お前、ハルにセクハラされてるって言ってるけど本当は……お前がハルにセクハラしてるんだぞ」
「っ!?」
反論したいが、客を目の前にしては口ごもるしかない。
そんな様子を見た店長が一言、客が帰った後にハルに言った。
「もっと堂々とすればいいのに」
店長の言葉にも腹が立ったが、それ以上に言われた一言で頭に血が上った。
「お客様は神様なんだからな!お客さんを満足させるのが俺達の仕事だ! いいか!? 嫌なことも我慢するのが接客業だ。それを忘れるな!」
「……」
店長の言葉に、今まで溜め込んでいたものが堰を切ってあふれ出した。
「……じゃあ……もう辞める」
ハルがそう呟くと、店長はバツの悪そうな顔をした。
「この店はバイトもまともに雇えないのかよ……」
そう言い残して店を出るハル。
その後、ハルは別の居酒屋チェーン店に面接に行ったが当然断られ、求人情報誌でもやはり落ちまくっていた。
「はぁ……」
溜め息しか出てこない。もう自分はどうしようもないくらいド底辺なんだとハルは思い知った。
そして、そんな時……ふと店長に言われた一言を思い出す。
『嫌なことも我慢するのが接客業だ』「お客様は神様……」『嫌なことも我慢するのが接客業だ』「嫌なことも我慢するのが接客業だ」「もう辞める」……
…………
…………
……
いや、流石にこれは我慢の範疇を超えている。
それに……『嫌なこと』ではなく、これは『嫌なこと』なのか? そうだ!この店はバイトもまともに雇えないのか!? ……いや、これも違うな。
このお店がお客さんを選り好みしすぎているだけだ! 確かに……お客様は神様だけどさあ……
でもだからってさあ……
「じゃあ……もう辞める」
ハルの独り言に、店長と店員達がギョっとする。そして店長が慌ててハルを呼び止める。
「おいおい!ハル!本気か?」
「だって……お客様は神様だし」
「いや、それはそうだけど……」
「でも、この店のバイトはやっぱり向いてないみたい」
「……そうか」
ハルの一言に、店長は力なくうなだれる。それを見ていた店員達はハルを引き止めようと必死になった。
「そんなっ!一緒に働きましょうよ!」
「そうですよ!私達、ハルさんにいなくなって欲しくないです!」
しかし、ハルは首を横に振った。
「いや、もういいんだ……」
「で、でも……」
店員達の制止を振り切って、ハルは店を出て行ってしまった……。
その日の夜。ハルは帰宅するとそのままベッドに潜り込んだ。そして枕に顔を押し付けて叫ぶ。
「あー!もう!やっぱり無理だったじゃん!ちくしょおおおっ!!」
本当は分かっていたのだ……あんなこと言っても無駄と。でも言わずにはいられなかった。そして、そんな自分が嫌になる。
「何やってんだ俺……本当にバカだな……」
そう呟いて布団を被ったハルだったが、一向に眠くならない。それどころか目が冴えてしまって余計にイライラしてしまう。
「クソッ!もう寝よう!」
そう思い電気を消して瞼を閉じるが眠れるわけもなく悶々としているうちに朝が来たのだった。しかもその日はバイトが入っていた日だった。ハルは鉛のように重い身体を引きずって準備を始めたのであった……。
それからというもの、全く眠れなかったハルは目の下にクマを浮かべてフラフラと出勤した。そして、いつものように仕事をこなすがどこか上の空である。
「ハルちゃん!酒足りてる?」
「え?あ、はい……」
「どうしたの?元気ないじゃん」
「……大丈夫です」
そんな様子を見た店長が声をかけてきた。
「大丈夫か?」
「……平気です」
ぶっきらぼうに答えるハルだったが、店長は気にした様子もなく続ける。
「そうか……何かあったらすぐ言えよ?」
「はい……」
そして閉店後、店長はハルに声をかけた。
「ハル、今日は大変だったな」
「別に……いつものことじゃないですか」
「そうだな……でも、ちょっと顔色悪いぞ?体調悪いんじゃないか?」
「……そんなことないです」
否定するが、ハルの顔色は明らかに悪い。しかし店長はそれ以上追及しなかった。その代わりと言わんばかりに言う。
「そうだ!この後飯行かないか?奢ってやるからさ!」
「……すいません。遠慮しておきます」
ハルは断った。しかし店長は食い下がる。
「いいから行くぞ!どうせ家に帰っても1人だろ?たまには人と飯を食った方が楽しいぞ!」
そう言われて、半ば強引に連れていかれるハル。居酒屋の近くにある小料理屋に入った2人は料理を注文する。
「じゃあ乾杯!」
「……いただきます」
2人で乾杯して、料理を食べ始めるがあまり箸が進まないようだった。その様子を横目で見ていた店長が言う。
「なあ、ハル」
「なんですか?」
「もしかして、例の店で何かあったのか?」
ハルは首を横に振る。
「いえ……別に何も」
店長はため息をつくと、諭すように言った。
「あのな、何もなかったらそんな態度取らないだろ?何があったか話してみろよ」
「……嫌です」
しかし、店長は食い下がる。
「なあ、頼むから話してくれよ……店員の悩みを聞くのも俺の仕事だしな!」
しばらく沈黙が続いたが、ハルは根負けしたのか話し始めた。
「実は……バイト先でちょっとトラブルがありまして」
「何があったんだ?」
「……セクハラです」
「は?セクハラってあのセクハラか?」
店長は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに真面目な顔になりハルに問いただす。
「具体的にどういう内容だ?」
「最初は脚を撫でられただけです」
「その後は?」
「……お尻を触られました」
それを聞いた店長は険しい表情を浮かべた。しかしすぐに元の表情に戻って言う。
「そうか……それは大変だったな」
「はい……」
「それで、どうする?辞めるのか?」
店長の言葉に、ハルは俯いて黙り込んでしまう。すると店長は続けて言った。
「本当に嫌なら辞めてもいいんだぞ?」
「……辞めません」
ハルの返事に店長は少し驚いた顔をするがすぐに優しい表情になって言った。
「そうか……どうしてだ?」
その問いにハルは一瞬戸惑った素振りを見せたが、結局答えずに黙り込んでしまった。そして再び沈黙が訪れる。
しばらく続いた沈黙を破ったのはハルだった。
「ご馳走様でした」
そう言うと、お金を机の上に置いて立ち上がった。そして出口に向かうと立ち止まり店長の方を振り向かずに言った。
「店長、ありがとうございます」
「……おう!」
ハルが帰って行った後、1人残された店長は小さくガッツポーズをしたのだった……。
数日後。いつも通りバイトに出社したハルだったが、その日は少し様子がおかしかった。どこか上の空で、そわそわしているように見えた。
「おはようハルちゃん!元気ないみたいだけど大丈夫?」
「あ……おはようございます」
「体調悪いの?無理しないで休んでもいいよ!」
心配そうに声をかける同僚達に笑顔で大丈夫だと答えるハル。しかし内心では別のことを考えていた。
(どうしよう……今日もまたセクハラされるんだろうか?)そう思うと気が重くなる。するとそこに店長がやってきた。
「おっす!みんな揃ってるか?」
その声を聞いた瞬間、ビクッと肩を震わせるハル。そんなハルの様子に気付くこともなく、店長は話を続けた。
「今日入った新人を紹介するぞー!」
すると、ホールスタッフの女性が1人入ってきた。ハルと同い年くらいの女の子でとても可愛らしい顔立ちをしていた。
(うわぁ……綺麗な子だな……)
思わず見惚れてしまうハルだったが、その女性はペコリと頭を下げると挨拶をした。
「初めまして!今日からお世話になります!よろしくお願いします!」
元気よく挨拶をする彼女の声にハッと我に返るハル。しかしすぐに視線を逸らすと素っ気なく返事をした。
「どうも……」
しかし、彼女は特に気にする様子もなく笑顔で続けた。
「私、花岡っていいます!よろしくね!」
(……なんだこいつ)
ハルは訝しげな表情を浮かべたが、そのまま仕事を始めた。彼女の方はというと興味津々といった様子でハルのことを見つめていたが、やがて他のスタッフに話しかけられるとそちらに向かって行ってしまった。
そんな様子を見ていた店長はニヤニヤしながらハルに話しかけた。
「新人が入ってきたからって、あんまり浮つくんじゃないぞ?」
「は?」
「彼女、かなり可愛いからな。お前がデレデレしないように釘を刺してるんだよ」
「……しませんよ」
ハルは素っ気なく答えると仕事に戻った。しかし内心はかなり動揺していた。
(まさか……またセクハラされるのか?)
そんな不安を抱きながら仕事をしていたが、その日は特に何も起こらずに終わったのだった……。
翌日、ハルがいつも通り出勤すると店長から声をかけられた。
「ハル、ちょっといいか?」
「……なんですか?」
店長はニヤリと笑うと話し始めた。
「実は今日から花岡が入ってくれることになったんだ」
「そうですか……よかったですね」
素っ気なく答えるハルだったが、内心はかなり動揺していた。
(どうしよう……今日もセクハラされるのかな?)
そんなことを考えているうちに開店時間となり、スタッフたちが慌ただしく動き始めた。
そんな中、店長が突然こんなことを言い出した。
「なあハル、今日のまかない何食いたい?」
「……別になんでも」
「遠慮すんなって!何でもいいぞ!」
(そんなこと言われても……)
正直、ハルは食欲がなかった。しかし、ここで断ると店長に怪しまれるかもしれない。そう思ったハルは適当に答えることにした。
「じゃあ……ハンバーグとか食べたいです」
それを聞いた店長は嬉しそうな顔をした。そして厨房にいるスタッフに向かって言った。
「そうか!ハンバーグか!了解しましたー!!」
(しまった……!つい本心を言ってしまった……!)
後悔するが時すでに遅し。ハルは諦めにも似た気持ちでため息をつくのであった……。
開店からしばらく経った頃、ホールスタッフの花岡が入ってきた。そして店長に声をかける。
「おはようございます」
「おはよう花岡!もう来てたのか!」
「はい!今日からよろしくお願いします!」
元気良く挨拶をする彼女に店長も笑顔で返す。そしてそのまま彼女を空いている席に案内するとメニューを渡した。
「好きな物頼んでくれ」
「ありがとうございます!」
(なるほど……こういう感じか)
ハルは店長と彼女のやり取りを見ながら納得した。どうやら彼女は新人で、しばらくは教育係の先輩と仕事をするようだ。
(なんだ……よかった)
昨日の件も、別にセクハラではなかったのかもしれない。そんなことを考えていると不意に声をかけられた。
「ねえ」
声のした方を見るといつの間にか彼女が隣に立っていた。そしてハルに尋ねる。
「何か食べたい物ある?」
突然話しかけられたことに驚くハルだったが、すぐに素っ気ない態度で答える。
「特にないです」
「え……そうなの?」
すると花岡は少し困った顔をして言った。
「うーん……じゃあ私が選んじゃうね!」
(なんなんだこいつ?馴れ馴れしいな)
そんなことを考えているうちに彼女は注文をするために厨房にいるスタッフに声をかけた。
「すみませーん!注文いいですかー?」
その声に店長が反応する。
「はいよ!何か用か?」
花岡は笑顔で答える。
「この子にステーキ定食をお願いします」
「了解!ちょっと待ってな!」
(……えっ!?)ハルは動揺した。まさか自分が食べるものを選ばれるとは思っていなかったからだ。しかもよりにもよって一番高いメニューである。
(ふざけるなよ……!)
内心怒りに震えるハルだったが、それを表に出さないように平静を装って尋ねる。
「なんで僕の分も?」
「え?だって一緒に食べようよ!」
(はあ……?何考えてるんだこいつ)
ハルはますます彼女のことがわからなくなった。